「アマルフィ 女神の報酬」主演の織田裕二
「待っていた」シリアス大作
織田裕二 が、公開中の「アマルフィ 女神の報酬」に主演している。
「踊る大捜査線」シリーズや「ホワイトアウト」といった娯楽作を経て、イタリアを舞台にした大人向けの大型サスペンス映画の主役へ。新たな挑戦にかけた思いを聞いた。(近藤孝)
イタリアに赴任してきた外交官の黒田(織田裕二、右)は、旅行者(天海祐希)の娘の誘拐事件に巻き込まれていく 「プレッシャーというよりは、待ってましたという感じだった」
日本映画として初のオールイタリアロケを敢行。人気作家、真保裕一の原作の映画化で、天海祐希、佐藤浩市らが共演。“歌姫”サラ・ブライトマンまでが本人役で出演する。普通なら、大変な気負いを感じるはずだが、娯楽大作を成功させてきた俳優には、新たなステップととらえる余裕があった。「ようやく、こういう作品に取り組めるタイミングがきた、新しい扉を開くぞ、という感じをすごく受けた。これを逃す手はないと思った」
主人公の黒田は、イタリアに赴任した外交官。日本人旅行者(天海)の娘の誘拐事件に巻き込まれ、犯人グループとの交渉に走り回りながら、連鎖テロ事件に直面する。苦境に立たされるのは、「踊る――」シリーズでの青島刑事と同様だが、明るい熱血漢、青島と違って、黒田は決して笑わず、かなりクールな印象だ。
「プロデューサーには、『冷たすぎないか』と言われたけど……。でも、むしろ、これぐらい冷静な男でないと、外交官として信用できないんじゃないか」
娘を誘拐された母親に対して、黒田は「助かります、大丈夫ですよ」などと気休めの言葉はかけない。逆に、イタリアでは、マフィアの資金源になるため身代金は用意できないというルールを伝える。「派手に動くのでないが、必要なことはぴしっと言う。個人的な感情は別で、外交官という立場としては、イエスかノーかをはっきりさせないと」
ローマやアマルフィ海岸の世界遺産で撮影されたが、「美しい場所だけを紹介した観光映画」とは一線を画している。「今は、素晴らしい場所を貸してもらったから、『よし全景を撮ろう』という時代じゃない。だって、そこに日本人が歩いているんだから。観光映画でなく、スリや誘拐にも遭いかねない現実を描いた」
日本映画が復興し、「娯楽のど真ん中をいく作品が並ぶようになった」と実感しつつ、「さらに、新しい道を切り開きたい」。熱い思いは、まったく変わっていない。
(2009年7月24日 読売新聞) 
【プレミアムシート】イタリア語に外交官役に新境地に挑んだ俳優・織田裕二
無口で武骨。職務に忠実で一見冷たそう。それでいて、心の芯ではしっかりと何かが燃えていて、実は暖かい外交官、黒田康作を演じる。外に向かってとにかく熱く燃え盛り、回りを巻き込んできた、これまでの“織田裕二像”とは正反対といっていい。
「プロデューサーからは『大人の色気を』って言われたんです。なんでおれに言うんですか?。福山(雅治)くんも、佐藤(浩市)さんもいるじゃないですか」とおどけるが、たとえばイタリア語を駆使するという設定をとっても「教えてもらう言葉は、教える人のイメージ通り。雰囲気を変えたり、皮肉を込めたり、たどりつくまで大変でした」とこだわりをみせる。イタリアでもテレビの討論番組をずっと見て、表情などを参考にしたという。
映画「アマルフィ 女神の報酬」は、全編イタリアロケのサスペンス大作。
主演を務めることは早くから固まっていたそうだが、「アバウトなイメージのまま撮影に入った」という。「(西谷弘)監督は自他ともに認める『日本一あきらめない監督』。監督のイメージに合うよう、つくりあげていきました」-。熱い信頼が、充実度を物語る。
× ×
《クリスマス直前のイタリア。大使館に赴任したばかりの外交官、黒田(織田)は、旅行者紗江子(天海祐希)の娘の誘拐犯からの電話に出たことで事件に巻き込まれていく。黒田は独断で紗江子を助け真相を探るが、事件は複雑な様相を見せていく…》
現在41歳。普通なら、ため息の一つもでそうな年代だが、「昔からやりたいと思っていた役柄はすべて40歳すぎ。ようやくやりたい役ができる年になったんです。いちばん脂がのった時期。ここからがスタートです」と表情は明るい。 《クリスマス直前のイタリア。大使館に赴任したばかりの外交官、黒田(織田)は、旅行者紗江子(天海祐希)の娘の誘拐犯からの電話に出たことで事件に巻き込まれていく。黒田は独断で紗江子を助け真相を探るが、事件は複雑な様相を見せていく…》 現在41歳。普通なら、ため息の一つもでそうな年代だが、「昔からやりたいと思っていた役柄はすべて40歳すぎ。ようやくやりたい役ができる年になったんです。いちばん脂がのった時期。ここからがスタートです」と表情は明るい。
若い侍とともに戦う椿三十郎役(映画)やドラマでの高校教師役など、若者を引っ張る役柄が増えたが、自身の探求心は、まだまだ熱い。「人間として学びたい、知りたいという欲が強いので年上の人と芝居したい。挑んでいきたいんです。若い人には『盗むものがあるなら勝手に盗んで』という感じ」と笑った。 「映画はもうごらんになられましたか? いかがでしたか?」 こうしたやりとり、ありそうで実は少ない。大阪での取材ということで「大阪のお客さんはイエス、ノーがはっきりしていて雰囲気に流されない。大阪でどう受け止められるか知りたかったんです」という理由から“逆取材”になったそうだが、それよりも、自分の仕事に向ける、真摯(しんし)な思いと姿勢がとても好印象だった。 (文・広瀬一雄、写真・飯田英男)MSN産経ニュース おだ・ゆうじ 昭和42年生まれ、神奈川県出身。昭和62年、映画「湘南爆走族」でデビュー。平成3年のドラマ「東京ラブストーリー」でブレーク、さらに9年、テレビドラマから始まった「踊る大捜査線」シリーズは『超』ヒットを記録、映画版第2作は現在も実写版邦画の興行収入記録を持ち、数多くのスピンオフ作品も生まれた。「アマルフィ 女神の報酬」はTOHOシネマズ梅田ほかで公開中。 Q:『アマルフィ 女神の報酬』の企画を最初に聞いたときはいかがでしたか? 4年ほど前にこの映画のお話をいただいたときに、正直言って夢みたいな話だと思いました(笑)。ドリームチームを組んで、しかも撮影場所は日本でもアジアでもなく、ヨーロッパだと聞いて大変だと思ったし、それにチネチッタの撮影所まで使って撮る日本映画なんて、なかなかないですよね。僕自身、観たいけど、現実にできるのだろうかと思っていました。ただ、一俳優としては面白そうだと思っていたので、撮影が楽しみでした。 Q:豪華キャストや、織田さんと親交の深い製作陣の顔ぶれも見逃せませんね。 プロデューサーの大多(亮)さんと、原作の真保(裕一)さんとの組み合わせが、未知で面白そうでした。お互い、別の作品でご一緒していまして、大多さんは「東京ラブストーリー」や「ラストクリスマス」といったラブストーリー系をやってきて、真保さんは『ホワイトアウト』でご一緒させていただいました。そんな二人が組むと一体どんな作品ができるんだろう? と、とにかくすごい楽しみでした。 Q:西谷弘監督とも『県庁の星』をはじめ、一緒に仕事をされてきた旧知の仲ですね。 ええ。西谷監督は、日本一、いや世界一かな、なかなかOKとは言わない監督なので(笑)。そのバイタリティーというのが、日本じゃなくてほかの国に行っても変わらないのか興味がありました。日本とは全然違う条件で撮らないといけないので、考えもしなかった問題点が出ると思いましたけど、監督ならねじ伏せてしまうのではないかという希望もありました(笑)。すべてが楽しみで、でも、できるのかという漠然とした夢のような企画でしたね。 Q:西谷監督によると、本作には織田さんの色気や、素の部分が出ているとか? 最初に、大多プロデューサーに色気を出すように言われたんです(笑)。色気って、福山雅治さんや佐藤浩市さんがいるのに、ここにいるのは織田ですけど(笑)? 何を言っているのかと思いましたけど、色気って何って考えたときに、独りよがりのキザなセリフとは違うだろうと考えました。いくらイタリアに行ったからって簡単に出るものじゃないですよね(笑)。 Q:とはいえ、皆さんイタリアという土壌にぴったりとはまっていましたが。 バルトリーニ警部をはじめ、イタリア人の俳優は、あいさつをするときにキスするのが当たり前ですよね。でも、片や僕は日本人。そんな文化がない中で生まれ育っているので、(僕があいさつをするときにキスしたら、周りから)ちゃかされちゃいますよ。僕には無理があると(笑)。ただ、もしかすると、やっとこの年になって出てくるものはあるのかもしれません。悩んだり苦しんだり、一生懸命にもがいている姿にしても、はたで見ていて色っぽい感じが出せるかもしれない。そこに希望を持ちました。 Q:ポーカーフェイスで物事にあたる黒田は、セクシーに映っていたと思います。 口には出さないけど、黒田本人は相当大変だったと思います(笑)。結局、自分一人で役について悩んでいても始まらないし、客観的に観て色気があるのかどうかは人の判断によるので、預けます、色っぽく撮ってくださいと監督に投げました(笑)。具体的には、目力を抜いて、やわらかい感じで演じてくれと言われました。人と話すだけにしても黒田はクールで冷静。言いにくいこともズバッと言う人なので、難しかったですね。 Q:そのクールで冷静な黒田を演じて、どのような感想を持たれましたか? 黒田は物事をはっきりと言う。例えば、「赤ん坊を抱えている女性はスリです」とかね。大多プロデューサーは冷たくない? って心配していましたが、僕はそうは思わなかった。むしろ海外に行ったときに、はっきりとズバズバ言ってくれた方が安全ですよね。日本の常識だけで判断すると、危険なことが多そうです。ダメなものはダメ、法律違反になる、そういうことを言ってくれた方がいいと思います。 Q:黒田のようなキャラクターを演じる織田さんの姿も斬新に映っていました。 西谷監督は今までに見せたことがない織田の芝居を見せたいとおっしゃってくださったので、NGをもらってもなぜだ? とは言わず、どういう風にすれば黒田をよく見せられるのか考えました。しかも、撮影開始前に「今回はお前を欲求不満にさせる」「満足するような芝居はできないぞ」とまで言われていました(笑)。もの足りないぐらいの芝居を要求するよと言われていたので、後は監督を信じて、作品を観るまでドキドキしていました(笑)。 Q:完成した映画をご覧になった感想はいかがでしたでしょうか? 僕はいろいろな意味でチャレンジが重なって、こうなったら心中だ! という覚悟で撮影していたので(笑)、客観的には観られなかったんですが、隣で観ていた天海祐希さんも含め、周りの人がみんな泣いていたんです。確かに胸に迫るドラマで、サスペンスがいつの間にか人の気持ちを追ってくストーリーに変わって、さまざまな登場人物の感情に入り込める映画だと思いました。 Q:ドコモ動画で限定配信されている「アマルフィ ビギンズ」では、黒田の過去が明かされているそうですね。 本編を撮ってから「アマルフィ ビギンズ」を撮りましたが、演じていて、もっと黒田を知りたくなりました。とても興味が沸きましたね。どうも外交官の仕事をしている以前に、過去にほかに何かをしていたようだと想像したくなる。ほかにも、黒田は普通の人が一生に一度経験するか、しないかという大事件に、しょっちゅう遭遇しているのかもしれないとかね(笑)。謎が多いからこそ知りたくなりますよね。 Q:今後は外交官・黒田のシリーズ化の可能性もありますが、いかがでしょう? まだまだ気が早いですよ(笑)。気が早過ぎますけど、僕自身もっと黒田を見たいし、知りたいという希望があります。今回のイタリアロケで感じたことですが、イタリアを知ることで、今の日本が見えたりする。海外に行くと、そういう経験をするじゃないですか。例えば、日本の治安はいい方だというけど、それがどういうことなのかとか。そういう知りたい願望が黒田に関してもあると思います。 Q:最後に公開を楽しみにしている人たちへ一言お願いします。 『アマルフィ 女神の報酬』は、数々の奇跡が重なった映画だと思います。本物のイタリアを撮るならと、製造中止のフィルムを持ち込み、その思いは映像となって作品に生かされていましたし、音響も拍手を送りたいほど素晴らしい仕上がりになっています。音を聞くだけでも絶対に映画館で感じてほしいです(笑)。『アマルフィ 女神の報酬』はあらゆる意味で今までにない日本映画なので、どう受け止められるのか本当に楽しみですね。
× ×
実は、インタビューの冒頭に、きちんとした姿勢で座り、ていねいな口調で逆に質問を受けた。
◇

悩み、苦しみ、一生懸命にもがいている姿は色っぽい シネマトゥデイ


■すべてが楽しくてまるで夢のような企画

■この年齢だからこそ出すことができる色気がある

■かつてない織田を見せるために、熟考を重ねた黒田像

■謎めいた黒田という男をもっと知りたくなるはず